2026年9月29日火曜日

【茂原市民会館】800席・71億円の新ホールは今どうなる? 水害リスクと近隣ホールを比べて考える

茂原市役所の向かいにあった旧茂原市民会館と旧中央公民館で、現在解体工事が進んでいます。

長年この地域で暮らしている方にとって、市民会館にはさまざまな思い出があるのではないでしょうか。個人的にも、子どもの頃には東映まんがまつりなどの映画上映を楽しみにしていた記憶があります。

一方、建物は老朽化し、旧市民会館は2019年に閉館。中央公民館も度重なる水害と老朽化を受けて2024年3月末で廃止されました。

そこで気になるのが、「この場所に新しい市民会館はできるのか?」という問題です。

2019年には「800席・約71億円」の新市民会館計画があった

茂原市は2019年、「(仮称)茂原市民会館建設基本計画」を策定しています。

当時の計画では、新しい施設は単なるホールではなく、市民会館と中央公民館の機能をまとめた複合施設とされていました。

  • 大ホール:約800席
  • 平土間使用時:約1,000人収容
  • 多目的ホール
  • 練習室・創作室
  • 調理室・和室
  • 市民活動室
  • 子育て支援スペース
  • 図書スペース

延床面積は約6,300平方メートル。概算事業費は、既存建物の解体費を含めて約71億円とされていました。

当時は2025年度から2026年度ごろの開館を目標としていました。

▶ 茂原市「(仮称)茂原市民会館建設基本計画」

2026年になっても新市民会館は建っていない

しかし現在は2026年。

当初想定されていた開館時期を迎えていますが、新しい市民会館は建設されていません。

現在進んでいるのは、旧市民会館と旧中央公民館の解体です。

市議会でも、解体後の跡地利用について早期に検討するよう求める意見が出ています。

つまり、2019年の計画をそのまま実行している段階ではなく、跡地利用や新施設のあり方を改めて考えている段階と見るのが現在の状況に近そうです。

市は「駅前への複合施設」も検討すると答弁

さらに重要なのが、2024年9月の茂原市議会での答弁です。

市は、旧市民会館・中央公民館跡地について「度重なる水害もある」としたうえで、茂原駅前の活性化も必要であることから、

「茂原駅前に新市民会館を含めた公共施設について、民間企業と複合施設の整備を検討していきたい」

という考えを示しています。

つまり現在は、「旧市民会館跡地に新しい市民会館を建てる」という一択ではありません。

旧中央公民館は実際に水害を受けている

この場所を考えるうえで避けて通れないのが、水害です。

茂原市中心部は一宮川流域にあり、過去に何度も大きな浸水被害を経験しています。

2019年10月の豪雨では、避難所となっていた中央公民館そのものが浸水し、避難していた住民がボートで別の場所へ移動する事態になりました。

市の資料でも、中央公民館は令和元年と令和5年9月の水害で大きな被害を受けたことが記されています。

そのため新たな公共施設を整備する場合、建物そのものの機能だけでなく、「どこに建てるのか」も重要な論点になります。

▶ 茂原市「洪水ハザードマップ」

茂原には東部台文化会館もある

一方、茂原市内にはすでに「東部台文化会館」があります。

1985年5月開館で、音楽ホールの座席数は338席。茂原市自身も「小さいながらも音響の良いホール」と案内しています。

演奏会、発表会、合唱など地域文化活動に利用されています。

▶ 茂原市「東部台文化会館 音楽ホール」

そのため新たに800席級のホールを整備するのであれば、338席の東部台文化会館では対応できない用途がどの程度あるのか、という点も一つの判断材料になります。

近隣には1,000席を超える大型ホールが複数ある

茂原周辺を見ると、大型文化ホールはすでに複数存在します。

施設 開館 主ホール
千葉県文化会館 1967年 1,700席超
市原市市民会館 1974年 1,527席
東金文化会館 1980年代 1,213席
君津市民文化ホール 1990年前後 約1,200席
千葉市民会館 1973年 1,001席
青葉の森公園芸術文化ホール 1992年 877席
茂原・旧新市民会館計画 未建設 約800席
千葉市文化センター 1990年 497席
蘇我コミュニティセンター 2016年リニューアル 390席
茂原市東部台文化会館 1985年 338席

大きなホールでは実際に誰を呼んでいる?

ホールの価値は座席数だけでは分かりません。

実際にどんな公演が行われているかを見ると、施設ごとの性格が分かります。

市原市市民会館では、2026年10月にREBECCAの全国ツアーが開催予定で、チケットは予定枚数終了となっています。

千葉県文化会館では、2026年だけでも島津亜矢、山本リンダ、田原俊彦、GRe4N BOYZ、千葉交響楽団、野村萬斎など、多彩な公演が開催されています。

東金文化会館もクラシックやポップスなど幅広い公演を開催しており、大型ホールとして実際に使われています。

このような近隣施設と比較した場合、茂原に800席級のホールを整備するのであれば、

  • どのような公演を想定するのか
  • 年間どれくらいの稼働を見込むのか
  • 東部台文化会館では対応できない需要がどれくらいあるのか
  • 近隣の大型ホールとの差別化をどうするのか

といった点が重要になります。

一方で「大型ホールがなければ大規模イベントができない」とも限らない

近年は、野外ライブやフェス形式のイベントも定着しています。

外房地域でも、大規模な屋外イベントが開催されるようになりました。

つまり、大きな文化イベントを開催する方法は、必ずしも固定式の大型ホールだけではありません。

一方、天候に左右されない屋内ホールには、演劇、クラシック、学校行事、講演会、式典など独自の役割があります。

どちらが優れているという話ではなく、茂原で実際に必要とされる用途をどこに置くかが重要になります。

2019年の「71億円」は現在も同じとは限らない

もう一つ大きな論点が建設費です。

約71億円という数字は、2019年に策定された基本計画当時の概算額です。

その後、全国的に建設工事費は上昇しています。国土交通省の建設工事費デフレーターでも、近年の建設費上昇が確認されています。

そのため、もし現在改めて同規模の施設を計画するのであれば、2019年当時の71億円をそのまま現在の事業費と考えることはできません。

実際に建設する場合には、最新の設計、資材価格、人件費などを踏まえた新たな費用算定が必要になります。

ホールだけで考えるのか、日常的に使う複合施設として考えるのか

2019年の計画で興味深いのは、新施設を単なるコンサートホールとして考えていなかったことです。

子育て支援、図書スペース、市民活動室、調理室、練習室などを含む複合施設として構想されていました。

大ホールだけを見れば「年間に何回使うのか」という疑問が出ますが、市民が日常的に利用する公民館・交流機能まで含めれば、施設の役割は大きく変わります。

今後の検討では「800席のホールが必要か」という一点だけでなく、どの機能を、どこに、どの規模で集めるのかという視点も必要になりそうです。

そして最大の論点の一つが「場所」

旧市民会館・中央公民館跡地は、市役所に近く、中心市街地にある便利な場所です。

その一方で、水害を繰り返してきた場所でもあります。

2019年には中央公民館そのものが浸水し、避難所として利用していた住民が再避難する事態も起きました。

2024年の市議会で茂原市が、度重なる水害を理由の一つとして駅前での複合施設整備を検討すると答えていることからも、立地問題は市自身が認識している論点です。

新しい公共施設は何十年も使うものです。

建物の規模や価格だけでなく、浸水リスク、避難時の利用、交通アクセス、駐車場、周辺施設との連携などを含めて検討する必要があります。

「昔の市民会館をもう一度」ではなく、今の茂原に必要な施設は何か

旧市民会館には、映画、舞台、市民行事など、長年さまざまな思い出が残っています。

一方、2019年に作られた新市民会館計画からもすでに7年以上が経過しました。

その間に、水害、人口構成、建設費、イベントの形、公共施設の使われ方も変化しています。

近隣には、市原・東金・君津・千葉など大型ホールを持つ街があります。茂原には338席の東部台文化会館もあります。

だからこそ今後の議論では、

「昔あったから同じものを建て直す」のではなく、2026年の茂原に本当に必要な施設は何なのか。

その視点から改めて考えることが重要になりそうです。

市民会館跡地をどう使うのか。新しい文化施設を造るならどこに、どのくらいの規模で、どんな機能を持たせるのか。

現在進んでいる解体工事は、単に古い建物がなくなるだけではなく、茂原のこれからの文化・交流拠点を考える一つの節目になりそうです。

※この記事は2026年9月時点の茂原市、市議会、各文化施設、国土交通省等の公開情報をもとに構成しています。新市民会館の建設場所・規模・事業費については、今後の検討により変更される可能性があります。

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